夢の島=吸殻の山

本内容は「せいじん」を対象としています。

Bali Shag PREMIUM VIRGINIA(バリシャグ プレミアムバージニア)


(2022年9月現在 40g ¥1260)

莨評をはじめるにあたって - まいこときしん

 

* 喫うまえに

 デンマーク産のシャグタバコ。ジョニー・デップの愛喫銘柄としても有名。
 会社は、スカンジナビアン・タバコ・グループ(以下STG)。
 STGといえば、バニラ着香が代表的な「COLTS」シリーズや、パイプタバコではわりと見かける「Sweet Dublin」も手掛けている。
 いずれも、高級志向のタバコではなく、庶民的な雰囲気が横溢するものばかり。
 値段的にも手に取りやすく、また喫味も軽く、喫いやすい。シガレット感覚で愉しめるような気安さがある。
 悪くいえばチープ、良くいえばラフ。しかし、ジャンクさはない。テキトーに喫っても美味いといった感じがある。
 そもそも、十年、パイプタバコを喫っていた身としては、デンマーク産はいずれもそういう傾向があるような気がする。「Orlik Golden Sliced」も「Mac Baren」も。


 というわけで、加湿を三日以上行ったもので味わう。
 葉そのものの香りは、黄色を基調としたように明るい。麦茶のよう。葉組は商品説明に倣うのであれば、バージニアオンリー。
 使用は、六張煙管。

 

* 喫味

 全体的には、酸味とまろやかさのバランスがつよく感じられ、サワークリームに若干の甘みが足されたような味わいが特徴的である。
 砂糖じみていない芋的な甘味が旨味を演出しており、それが出汁的な働きをし、味わいに深みをもたらしている。
 層としては同心円状に甘味→酸味→まろやかさの順で、右へいくほど厚くなっている印象があり、そのため、甘味はおとなしい。とはいえ、底にはたしかな甘味を感じる。
 酸味はつねにまろやかさと混同して鼻を抜け、尖ってはいない。また、濃厚なまろやかさというほどのことでもない。双方がとけ合い、複雑さが生まれている。気をつけて喫うことで多様な揺らぎをもたらし、そこがこのシャグを丁寧に喫うことで得られる愉しさなのかもしれない。じっさい、小麦の味わいや干しブドウの味わいが顔をのぞかせたりする。
 けっして味が近いわけでもないのに、マヨネーズやワインの類をふと連想させる。
 マヨネーズとの違いはツンとくる酸味が欠如しているという点において、ワインとの違いはその苦味が欠落しているという点において。
 ただ、別のものに置き換えたときに、近いと直覚するのは、熟成の浅く、苦みの少ないあっさりとした赤ワイン。これは酸味を通して感じるフルーティーさと、連続喫煙するとあらわれてくるヨーグルト感が影響しているのかもしれない。
 全体的にいずれかの味が突出しているわけでなく、バランスに秀で、喫いやすい。
 飽きがこない喫味であることから、片手間でもひっかかりはなく、翻ってじっくり喫ってもそれなりに面白い。そういう意味では、前述したパイプタバコの「Orlik Golden Sliced」に近いような気もする。ほかの銘柄を気に入ってそればかり喫うようになっても、しばらくするとまた戻ってきたくなるような……。
 バージニアに挑戦してみたい方にすすめたい銘柄であり、素朴な味わいをもとめる初心者にもすすめられる万能な喫味といえる。