夢の島=吸殻の山

本内容は「せいじん」を対象としています。

R&W GREEN(ロウ グリーン)


(2022年11月現在 30g ¥1200)

莨評をはじめるにあたって - まいこときしん

 

* 喫うまえに

 買い求める前に、パッケージになにか違和感を覚えていたが、案の定、名前が変わっていた。旧名は「RAW ORGANIC GREEN(ロウ オーガニックグリーン)」。
 どうして名前が変わったのだろう……。
「R&W」シリーズは、シャグタバコのなかでもある一定の堅実な地位を確保しており、ファンが多い。それというのも、無添加無添加を謳うシャグは他にもあるが)かつ有機栽培を謳っており、こだわり抜いた、無垢な、〈ありのまま〉のタバコであるというのを押し出しているからである。
 紙巻から手巻に移行して、タバコ葉の味わい深さにのめってしまい、やがて純粋なタバコ葉の味を追い求めようになってしまった一部の熱心な方々にはたまらないだろう。めずらしいことに、その宣伝文句に違わず、そういった方々の期待に応える完成度を誇っている。
 同じく無添加を押し出しているシガレットの「AMERICAN SPIRIT(アメリカン・スピリット)」から移行してくる方がいるのも頷ける。


 ともかく、三日以上加湿して味わう。
「R&W」は現時点で全三種あるが、今回は「GREEN」を。
 葉組はブラジル南部のサンタクルズ・ド・スルとプルメナウの有機栽培農場で収穫されたバージニア葉のブレンドとのこと。
 これは商品紹介から抜き出して記したものだが、あえて細かくバージニア葉の産地を明記しているのには、それなりに理由がある。
 タバコ葉はどの品種にも当てはまることだが、同じ品種でも産地が違えば味も違う。これは、土壌に由来するからであろう。
 代表的なのは、葉巻——プレミアムシガーである。産地で有名なのは、キューバを筆頭に、ホンジュラスニカラグア、ドミニカなどだが、一様にシガーリーフをあつかっているとはいえ、それぞれに味の違いがある。また、同じ国でも地域によってさらに味は変わる。葉巻はその奥深い相異を複雑に愉しむものであるが、パイプタバコ、シャグタバコといった類もその例に漏れはしない。ブレンドするにあたって、さまざまなタバコ葉の品種を組み合わせたり、味付したり、製造工程にひとひねり加えたりするため、その相異は埋もれがちだが、たしかにバージニア葉ならバージニア葉、オリエント葉ならオリエント葉、バーレー葉ならバーレー葉と、国や地域によって味わいが割合はっきりと違う。なかでも、シャグタバコにおいて——おそらくパイプタバコも同様だろうが——、葉巻でいうところのシガーリーフ——つまり、味の振幅が大きく、単葉で相異を愉しむ品種にあたるのは、バージニア葉である。
 ……と、ここまで一丁前に御託を並べてきて、いよいよ今回のブラジル産バージニア葉についての特徴を語らなければいけない段になってきたが、それはいずれ「R&W」シリーズをひと通り味わったあとに、あらためて分析してみようと思う。いかんせん、シャグタバコのバージニアブレンドを一巡してはいないのである。未熟であるがゆえに、適当なことはいえない。
 閑話休題。香りは開けてすぐ黒糖のもったりとしたにおい。しばらくしてそれは、ほのかに発酵した藁や、糠のようなと形容しても遜色ないにおいに移行する。
 使用は、六張煙管。

 

* 喫味

 じつに直線的な味わい。
 甘味と酸味が競って飛びこんで来、颯爽と鼻を抜けていく。
 まろやかさは弱く、とにかくガツンと甘味酸味がぶつかってくる。
 語弊を恐れず、感覚的にいうと、さながら熟したトマト感がさっと通り過ぎ、あとからラムネじみた味がする。口中に留まる味が青い。どうしてまたそんな味がするのかと、いろいろ頭をこねくり回しながらゆっくり喫うと、正体がそれとなく察知できて、この味の因となっているのは、おそらくレモングラスなのである。
 酸味はレモングラス風味が担っていて、それがいくらかの清涼さも伴っている。それに甘味が合わさって、そう感じてしまうのだ。ちなみに後味も面白く、鼻に抜けていったあとに、鼻腔にはほのかな植物的クリーミーさが残り、駄菓子のラムネの後味を彷彿とさせる。もちろん、着香はされていない。香りづけされていないにもかかわらず、このような味が展開されるあたり、バージニア葉のユニークさを感じる。比較的尖ったあじわいであり、小麦、芋といったやんわりとした甘味の要素はあまり感じられない。
 スッとかすめる静かな清涼感、そしてほのかに感じられる駄菓子のラムネのような粉っぽい丸みのある甘味が、どこかなつかしく、そして好ましく思えると、愉しく、また美味しく喫える。しかし、いくらかバージニアの銘柄を喫ってからこれを喫ってみたほうが、より味の違いが判然として驚けるのではないかと思う。